法律って慣れてないと読みにくいですよね。慣れたら読みやすくなるのかわからないけれど。 取り違いや誤解、漏れが少ないようにを意識して書かれているのか、どうしても冗長に感じます。 よくあるのが「AAAのBBB若しくはCCCのDDD」のようにAAAとCCC、BBBとDDDが並列で、これを一塊として後の文が続くもの。この塊を抜き出せると一気に読みやすくなります。
てことでリファクタリングをしてみる。テストがないのは気にしないで。 やるのは一次変数の抽出と名前の変更。
お題は「特定商取引に関する法律」の第三節 通信販売(通信販売についての広告)、第十一条です。 選んだ理由はたまたま今読んでるから。
まず原文から開始。
第十一条 販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、主務省令で定めるところにより、当該広告に、当該商品若しくは当該権利又は当該役務に関する次の事項を表示しなければならない。ただし、当該広告に、請求により、これらの事項を記載した書面を遅滞なく交付し、又はこれらの事項を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には、販売業者又は役務提供事業者は、主務省令で定めるところにより、これらの事項の一部を表示しないことができる。 一 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価(販売価格に商品の送料が含まれない場合には、販売価格及び商品の送料) 二 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法 三 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期 四 商品若しくは特定権利の売買契約の申込みの撤回又は売買契約の解除に関する事項(第十五条の三第一項ただし書に規定する特約がある場合にはその内容を、第二十六条第二項の規定の適用がある場合には同項の規定に関する事項を含む。) 五 前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項
とりあえず目立つところに一時変数の導入。まずは「いい名前が思いつかないので変な名前をつける」でやります。
- "販売業者又は役務提供事業者" -> HOGE
- "通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務" -> FUGA
- "当該商品若しくは当該権利又は当該役務" -> FUGA
- "これらの事項を記載した書面を遅滞なく交付し、又はこれらの事項を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)を遅滞なく提供する旨の表示をする" -> PIYOする
第十一条 HOGEは、FUGAの提供条件について広告をするときは、主務省令で定めるところにより、当該広告に、FUGAに関する次の事項を表示しなければならない。ただし、当該広告に、請求により、PIYOする場合には、HOGEは、主務省令で定めるところにより、これらの事項の一部を表示しないことができる。 一 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価(販売価格に商品の送料が含まれない場合には、販売価格及び商品の送料) 二 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法 三 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期 四 商品若しくは特定権利の売買契約の申込みの撤回又は売買契約の解除に関する事項(第十五条の三第一項ただし書に規定する特約がある場合にはその内容を、第二十六条第二項の規定の適用がある場合には同項の規定に関する事項を含む。) 五 前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項
ある程度読めてきたので、意味の通る名前で残りもやります。
- 販売対象: 商品、役務、権利を纏めて呼称する。FUGAもこれにマージ。
- 費用: 商品や権利は販売価格(商品の場合は送料含む)や代金、役務では対価が使われているのを纏めて呼称する。
- 引渡時期: 引渡時期、移転時期、提供時期を纏めて呼称する。
- 販売者: HOGEをリネーム
- 別途表示: PIYOをリネーム
第十一条 販売者は、販売対象の提供条件について広告をするときは、主務省令で定めるところにより、当該広告に、販売対象に関する次の事項を表示しなければならない。ただし、当該広告に、請求により、別途表示する場合には、販売者は、主務省令で定めるところにより、これらの事項の一部を表示しないことができる。 一 販売対象の費用 二 販売対象の費用の支払の時期及び方法 三 販売対象の引渡時期 四 商品若しくは特定権利の売買契約の申込みの撤回又は売買契約の解除に関する事項(第十五条の三第一項ただし書に規定する特約がある場合にはその内容を、第二十六条第二項の規定の適用がある場合には同項の規定に関する事項を含む。) 五 前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項
これくらいなら読めるかな。特に一、二、三の並びが明確。だいたい条文は同じ関心ごとで並んでいるから、読み慣れると自然とこんな感じに見えるらしいです。ほんとかよって気分はありますが。
ここで挙げているのは一条だけなのでそれほど変わっていないように思えるかもしれませんが、全体でみると同じ言葉のくりかえしってたくさんあるので、読みにくい時はやってみると一気に読みやすくなったりします。例えば先に「販売者」で括った「販売業者又は役務提供事業者」は一単語(みたいなもの)なのですが、日本語で考えると「又は」が入っていて文章を混乱させます。こう言うのが頻出してるんですよね。
検索してハイライトしたもの。こんなの読みやすいわけがない。
「若しくは」と「又は」をハイライト。つらい……。
これまだ検索で完全一致するならいいんですが、先の例でFUGAに纏めたときみたく「当該」で参照してたりするので機械的にはやり切れないです。
あと、一緒にしちゃいけない物を統合しちゃうと誤解が生じる(バグですね)ので、ある程度意味取りできたらやっぱ原文で意味が変わってないかは確認しなきゃです。
何かの参考になれば。
おまけ
ツイート: 法律文書とか利用規約とかを読んだ後、だいたいこんなこと思ってます。
ブクマコメより: 2020-09-10T18:33追記
「これ表形式にした方が100倍分かりやすいだろ…」と読んでて思う条文は大量にある
ありますね。それでか別表にしてたりするんですが、表にしたところで(以下略
ちなみに 特定商取引に関する法律施行令の別表第四 です。 表って、もっと、こう・・・、ね?