日々常々

ふつうのプログラマがあたりまえにしたいこと。

型で語るカタ

2025-07-11 に 型の表現力 / 関ジャバ'25 7月度 を開催しました。 今年は毎月やるとか言ってますが、なんとか折り返しました。これも一緒に運営/参加してくださっている皆様のおかげです。

今回は公募セッション枠。あいてたので2日前に申し込んだわけですが、タイトル先行した結果ものすごい難産でした。困ったもんだ。

speakerdeck.com

Javaでのアプリケーション開発で、型の専門的な知識がなくても利点が得られそうなところを挙げた感じです。

当日の話

家出る直前にMacBookProの確認したら電池0%で、「iPhoneKeynoteでプロジェクター出力できるし、いけるいける」とiPhoneだけ持って現地向かいました。 開始前に接続確認したら、プロジェクターとの相性?でプロジェクターには「この信号を処理できません」的なメッセージが出てアウト。 画面だけなら映ったんですが、Keynoteでプレゼン開始するとダメになるパターンでした。こういうのもあるのか。

一応バックアップとしてSpeakerdeckに先にアップロードしていたので、端末を借りてそちらを映してもらって難を逃れました。 ダメだったらPDFでの投影とか、内容は現場じゃ資料なしで話してるものなので「最悪口頭だけでもいけるかー」くらいに思っていたので、トラブルの割には焦りとかはなかったです。

ただKeynoteの発表者ディスプレイがないと色々やりづらいなぁと再認識しました。 次のスライドが見えてなくて「どこまでここで話すんだっけ?」となっちゃったし、時間とページ数がわからないのでタイムコントロールが難しかったです。

セクション画像

Grokさんにセクションタイトルで画像を作ってもらったら、なんか人の画像が多かったんだけど、なんでだろな。

ChatGPTさんに「プリミティブとラッパー」を描いてもらったらこんな感じでした。

なるほど。

イニシャライザのどうでもいい話

すごくどうでもいいんだけど、Javaにはインスタンスイニシャライザとコンストラクタというのがあって。

class Hoge {
  // これがインスタンスイニシャライザ
  {
    int i = 0;
    i++;
    i++;
    i++;
  }

  // これがコンストラクタ
  Hoge() {
    long l = 0;
    l--;
    l--;
    l--;
  }
}

これを javap するとこうなって、インスタンスイニシャライザはみあたらない。

% javap -p Hoge
Compiled from "Hoge.java"
class Hoge {
  Hoge();
}

別に消えてるのではなくて、コンストラクタに展開されるん。 javap -c すると

% javap -c Hoge
Compiled from "Hoge.java"
class Hoge {
  Hoge();
    Code:
       0: aload_0
       1: invokespecial #1                  // Method java/lang/Object."<init>":()V
       4: iconst_0
       5: istore_1
       6: iinc          1, 1
       9: iinc          1, 1
      12: iinc          1, 1
      15: lconst_0
      16: lstore_1
      17: lload_1
      18: lconst_1
      19: lsub
      20: lstore_1
      21: lload_1
      22: lconst_1
      23: lsub
      24: lstore_1
      25: lload_1
      26: lconst_1
      27: lsub
      28: lstore_1
      29: return
}

べろっと。 iinc ならんでるとこがインスタンスイニシャライザ由来で、 lsub とかがコンストラクタ由来なのは雰囲気感じられればOK。

これだけだとふーんって感じだけど、コンストラクタはオーバーロードできるんだよね。

class Hoge {
  // これがインスタンスイニシャライザ
  {
    int i = 0;
    i++;
    i++;
    i++;
  }

  // これがコンストラクタ
  Hoge() {
    long l = 0;
    l--;
    l--;
    l--;
  }

+ // オーバーロードしたコンストラクタ
+ Hoge(Object o) {
+   o.toString();
+  }
}

こうしてもどちらのコンストラクタが実行されるときもインスタンスイニシャライザは実行されるんだけど、コンストラクタに展開されるってことはー

% javap -c Hoge
Compiled from "Hoge.java"
class Hoge {
  Hoge();
    Code:
       0: aload_0
       1: invokespecial #1                  // Method java/lang/Object."<init>":()V
       4: iconst_0
       5: istore_1
       6: iinc          1, 1
       9: iinc          1, 1
      12: iinc          1, 1
      15: lconst_0
      16: lstore_1
      17: lload_1
      18: lconst_1
      19: lsub
      20: lstore_1
      21: lload_1
      22: lconst_1
      23: lsub
      24: lstore_1
      25: lload_1
      26: lconst_1
      27: lsub
      28: lstore_1
      29: return

  Hoge(java.lang.Object);
    Code:
       0: aload_0
       1: invokespecial #1                  // Method java/lang/Object."<init>":()V
       4: iconst_0
       5: istore_2
       6: iinc          2, 1
       9: iinc          2, 1
      12: iinc          2, 1
      15: aload_1
      16: invokevirtual #7                  // Method java/lang/Object.toString:()Ljava/lang/String;
      19: pop
      20: return
}

なるほど、イニシャライザが複製されておる。

で、コンストラクタはチェーンできるんだけど

class Hoge {
  // これがインスタンスイニシャライザ
  {
    int i = 0;
    i++;
    i++;
    i++;
  }

  // これがコンストラクタ
  Hoge() {
    long l = 0;
    l--;
    l--;
    l--;
  }

  // オーバーロードしたコンストラクタ
  Hoge(Object o) {
+   this();
    o.toString();
  }
}

これで展開されてるとイニシャライザが2回実行されることになるので、当然

% javap -c Hoge
Compiled from "Hoge.java"
class Hoge {
  Hoge();
    Code:
       0: aload_0
       1: invokespecial #1                  // Method java/lang/Object."<init>":()V
       4: iconst_0
       5: istore_1
       6: iinc          1, 1
       9: iinc          1, 1
      12: iinc          1, 1
      15: lconst_0
      16: lstore_1
      17: lload_1
      18: lconst_1
      19: lsub
      20: lstore_1
      21: lload_1
      22: lconst_1
      23: lsub
      24: lstore_1
      25: lload_1
      26: lconst_1
      27: lsub
      28: lstore_1
      29: return

  Hoge(java.lang.Object);
    Code:
       0: aload_0
       1: invokespecial #7                  // Method "<init>":()V
       4: aload_1
       5: invokevirtual #10                 // Method java/lang/Object.toString:()Ljava/lang/String;
       8: pop

きえるわけだ。

これ自体は明示的にコンストラクタ呼び出しをすることで親クラスのコンストラクタ呼び出しとかも消えるし、特に違和感があるでもない。 けど、Javaコードが増えてバイトコードが減るのが面白いなぁって。

Hoge.java Hoge.class
this()なし 310 394
this()あり 322 372

インスタンスイニシャライザなんて書かないだろから通常のアプリケーション開発ではほんとどうでもいいことなんだろけど、任意のバイトコードをいじったりするツールとか作るなら気にしなきゃなのかなぁ。

私個人だと 昔から「コンストラクタはチェーンしよう」って言ってるし、イニシャライザを書くこともそんなにないからこの状況になることもそうないんだけども。

なお実行環境は以下の通り。あんま関係ないと思う。

% java -version
openjdk version "21.0.7" 2025-04-15 LTS
OpenJDK Runtime Environment Temurin-21.0.7+6 (build 21.0.7+6-LTS)
OpenJDK 64-Bit Server VM Temurin-21.0.7+6 (build 21.0.7+6-LTS, mixed mode, sharing)'

追記:バイトコード上での名前とかstaticイニシャライザとかの話

もともとこれ見る発端が、コンストラクタもインスタンスイニシャライザもコンパイルすると <init> って名前でクラスファイルに入ることから、両方あったらどうなるんだっけ?とみたものです。 javap で見るところでは「コンストラクタでしょ?」とJavaコードで書くコンストラクタのように示されていますが、たとえば // Method java/lang/Object."<init>":()V などで「親クラスのコンストラクタ」とかが出てきています。この <init> がコンストラクタおよびインスタンスイニシャライザです。 で、名前が同じもんだから、バイトコードだけで見るとコンストラクタとインスタンスイニシャライザの区別がつかなかったりするわけです。実害はない。

なおstaticイニシャライザでは <clinit> という別の名前が割り当てられるので、混ざったり展開されたりはしないようです。

複数アプリケーションを育てていくための共通化戦略 #jjug_ccc

2025-06-07に開催された JJUG CCC 2025 Spring で話しました。

speakerdeck.com

内容については全部スライドに書く形式にしましたので、資料を見ていただければと思います。

JJUG CCCについて

今回の参加登録が久々に1000人を超えました。 ハイブリッド開催など試行錯誤を繰り返されていましたが、大台は参加者としても感慨深いです。

どうやら今回でJJUG CCC10回目の登壇だったようです。

(ページ数が多い&内容に関係がないので共有スライドからは除外したページ)

拙いCfPを毎回読んでいただいて&聞きに来ていただいてありがとうございます。

今回のCCCは8トラックで最後の枠は交流会準備などで減る時間帯。 被った人たちで「そっち見に行きたいんだけどなぁ」みたいなのを言い合っていました。

複数トラックイベントはどのセッションを聞くかを選ぶのを迷うのがよくて(でないと偏ってしまいますしね)、 聞いた感じ各部屋立ち見もなく、タイムテーブルの妙、素晴らしい仕事だったと思います。

セッションについて

前日にこれで

この時点で80ページ程度。そこから言っている通り付録(若干緑がかったSpringのとこ)を丸々足したので、45分に収まるわけもなく。 あとパターン言語に寄せているところはもっと文字数多かったです。(ここは減らす努力をした。)

とはいえ最終セッションとはいえオーバーするなんてトリを任せて頂いたCCC運営の皆様に失礼だと思い、なんとかしようとは思っていました。 ただ特に前々回のセッションは早送りが過ぎたなぁあれは無いわと反省もしていたものでして。

そんなこんなで方針を決めたら

某ゆ: どうせ終わらないんでしょ?

結果は45分ピッタリで終わったはずです。10秒程度は超えてるかもしれませんが、超えたとは言われてない。

ちゃんとおわる #とは

セッションスタイル

内容だけで伝わるものはブログとか動画とかでいいと思うんです。

オフラインイベント復帰後は特に、オフラインの対面でやるからこそのセッションをしたいとは思っていまして。

その結果「資料に書いたことは読まず、力点をピックアップして伝える」(要約というか、これもモデリングです)というスタイルを検証中です。 話ながら、聞いてくれている人の反応を見ながら、当日の他のセッションとかの流れを取り入れながら。

関ジャバでのLT もその練習みたいなとこはあります。 普通に考えてLTで話すネタじゃないよなぁ。

聞いてる側もスライドをしっかり読もうとしたら話についてこれないだろうと思いましたし、「あとで公開します」だと忘れちゃうかもなので、セッション前に公開としました。

セッション前に資料できてたのは初めてかもしれない

私的にはそれなりに手応えを感じているんですが、聞いている方が実際どう感じているのかはわかりません。CCCのアンケートでも他でも、フィードバックくれると嬉しいです。

おまけ

ぅぉぃ!